BRCA1遺伝子の病的変異は甲状腺がん、BRCA2遺伝子の病的変異は膀胱がん・頭頸部がん・皮膚がんのリスク上昇と関連することが分かった。国内のがん患者3,489人と、がんのない38,842人を比較した結果で、遺伝子とがんリスクを結ぶ知見が4種類のがんへ広がった。
9種類のがんを非がん対照者と比較
理化学研究所の統合生命医科学研究センターの研究者が主導する国際共同研究は、BRCA遺伝子との関連が未検討だった9種類のがんを対象にした。膀胱がん、骨のがん、脳のがん、頭頸部がん、肉腫、皮膚がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がんについて、症例対照解析を行った。
解析には、国内の血液試料データ基盤BioBank Japanを使った。この基盤は、日本各地の医療機関で2003年から2018年に採取された血液試料を登録している。がん患者3,489人と、同じ基盤に登録されたがんのない38,842人のBRCA遺伝子の変異を比較し、がんとの関連を調べた。
BRCA1とBRCA2で関連するがんが異なる
比較の結果、病気との関連がある「病的変異」とがんリスクとの関係は、二つの遺伝子で異なった。BRCA1では甲状腺がん、BRCA2では膀胱がん、頭頸部がん、皮膚がんのリスク上昇との関連が見いだされた。
BRCA遺伝子の病的変異は、乳がんだけでなく、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんのリスクとも関連することが知られている。今回の解析は、その関連についての知見を、これまで検討されていなかった4種類のがんへ広げた。
膀胱がんでは女性で影響が大きい
BRCA2の病的変異と膀胱がんリスクとの関連には、男女で違いがあった。病的変異がリスクに及ぼす影響は、男性より女性で大きかった。
治療との接点はDNA修復を妨げる薬
既にBRCAとの関連が知られるがんでは、PARP阻害薬や特定の化学療法薬を使う個別化医療が臨床で行われている。PARP阻害薬は、がん細胞がDNAを修復する働きを妨げ、がん細胞を死滅させる薬である。
今回の4種類のがんについて、研究責任者の桃沢幸秀は、結果が積極的な経過観察の推奨へ直ちにつながるものではないと説明している。確認されたのは病的変異とがんリスクとの関連であり、4種類のがんに対する治療効果を示した結果ではない。