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ハエの腸細胞の入れ替わりを左右する細胞質の粘度

この記事のポイント

  1. 実現したこと

    代謝されない分子を餌として与え、ハエの腸細胞の死を抑えられることを確認した。

  2. 実現の仕組み

    腸細胞が細胞質の粘度を通じて栄養の充足や不足を感知する仕組みが示された。

  3. 得られた結果

    調べたアミノ酸は、種類によらず濃度を大幅に上げると腸細胞の死を抑制した。

  4. 従来との違い

    餌のアミノ酸濃度を90%減らすと、腸細胞の入れ替わりに関わる細胞死が誘発された。

ショウジョウバエの腸上皮を模式的に拡大し、流動的な細胞質の細胞が列から離れかける様子と、粘度の高い細胞質を保つ隣接細胞を描いた編集イラスト。
AI生成画像

ショウジョウバエの腸細胞の入れ替わりには、栄養量に応じた細胞質の粘度が関わることが示された。特定のアミノ酸を感知する経路だけでは実験結果を説明できず、代謝されずに細胞質の粘度を高める分子でも細胞死が抑えられた。

栄養不足と流動的な細胞内部が入れ替わりに結び付く

ショウジョウバエでは、栄養が少なく腸細胞の内部が流動的な条件で、細胞の入れ替わりが増えた。理化学研究所生命機能科学研究センターのSa Kan Yooらは、この速い入れ替わりに関わる細胞死をerebosisと名付け、その発生が栄養条件によってどう変わるかを調べた。

細胞死を変えたのは糖濃度よりアミノ酸濃度

餌の糖濃度を変えても、erebosisには影響がなかった。一方、アミノ酸濃度を90%減らすと、この細胞死が誘発された。通常のアミノ酸感知に関わる生物学的経路を遮断しても発生を阻止できず、アミノ酸量の効果を既知の感知経路だけで説明することはできなかった。

アミノ酸の種類と代謝を切り分ける

erebosisを抑える高アミノ酸食に含まれる濃度で、個々のアミノ酸を単独で与えても、抑制は起きなかった。しかし濃度を大幅に上げると、調べたどのアミノ酸でも抑制が起きた。アミノ酸の代謝を阻害した条件でも抑制は続き、代謝されないアミノ酸類似体もerebosisに影響した。

代謝されない分子で細胞質の粘度を変える

代謝されない類似体の効果を受け、Sa Kan Yooらは細胞質の物理的な性質に着目した。ハエの細胞に入り、代謝されずに細胞質の粘度を高める、生化学的に異なる2種類の分子を餌として与えると、erebosisが抑制された。この結果に基づき、腸細胞が細胞質の粘度から栄養の充足や不足を感知して状態を調整する概念を、viscosatietyと名付けた。