山火事が生む積乱雲の内部を、発生から約1時間後に航空機が捉えた。NASAの大気観測キャンペーンINSPYREは、アイダホ州の草地火災で生じた雲と煙の流れを飛行し、煙が上空へ運ばれる過程を調べる測定データを得た。
火災が生む雷雨は煙を成層圏へ運ぶ
強い火災の上に発達する火災積乱雲は、英語でpyrocumulonimbus、略してpyroCbと呼ばれる。雷や雨に加えて強風を生み、火災そのものが周囲の気象を変化させる。
最大級の雲は煙を高度約10〜15キロメートルまで運び、成層圏へ到達させることもある。この煙の輸送を調べるため、NASAは火災積乱雲の研究に特化した初の航空観測キャンペーンINSPYREを実施し、夏の6週間にわたり観測した。
雲の内部、上空、地上から同じ現象を測る
米国立大気研究センター(NCAR)のGulfstream機を使った観測では、煙粒子と気体を採取し、氷晶を撮影した。雲を通過する放射と宇宙へ反射される放射も測り、煙の成分と雲の状態、放射を観測対象にした。
NASAの高高度観測機ER-2は14の観測機器を搭載し、火災の強さと上昇気流の速度、煙、雲の性質を上空から捉えた。センサーを装備したトラックも同じ現象を地上から観測し、航空機とは異なる位置からデータを集めた。
草地火災で発生した雲を3時間追跡
8月26日、アイダホ州東部のWildhorse草地火災から、予想されていなかった火災積乱雲が発生した。NASAによると、付近を飛んでいたGulfstream機は進路を変更し、約3時間にわたって雲の噴出域と煙の流れの内部を往復した。
この遭遇で得られたのは、火災積乱雲の発生から約1時間後の噴出域の測定データである。観測は雲が発生した直後の段階を捉えており、煙が上空へ運ばれる過程を調べる材料となる。
煙と放射の測定を気候計算へつなぐ
成層圏へ入った煙粒子は数カ月以上残ることがあり、大気が吸収する太陽エネルギーと地表へ届く太陽エネルギーに影響する。航空観測で測った粒子と放射は、この長く残留する煙の影響を調べるためのデータになる。
米海軍研究所の気象研究者で観測キャンペーンの共同主任研究者を務めるDave Petersonは、多くの数値予測モデルが火災積乱雲とその煙の注入の効果を明示的に組み込んでいないと説明している。取得した粒子、気体、放射の測定データは、天候と気候への影響を計算するシミュレーションの検証・改善に使われる予定だ。