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衛星観測で学ぶ気象AI、平均降水量の誤差を従来モデル比40%削減

この記事のポイント

  1. 実現したこと

    大気モデルNeuralGCMは、解像度280 kmで降水の日周期と極端な降水をより正確に再現し、降水量上位0.1%で大きな改善を示した。

  2. 実現の仕組み

    大規模な大気の流れを物理計算で扱い、微分可能な計算基盤を通じて小規模な降水過程を衛星観測から学習する。

  3. 得られた結果

    Googleの複数年シミュレーションの比較では、平均降水量の誤差が主要な大気モデルより平均40%小さかった。

  4. 従来との違い

    降水部分の学習に、従来の再解析データに代えて、2001~2018年のNASAの衛星降水観測を直接使った。

地球上空を流れる広域の雲と局地的な雨雲を、上空の観測衛星が見下ろす編集イラスト。大気の流れと衛星降水観測を組み合わせる気象AIの仕組みを表している。
AI生成画像

物理計算とAIを組み合わせる大気モデルNeuralGCMが、降水を扱う部分を衛星観測から直接学習した。Googleの評価では、解像度280 kmで15日先までの降水予測が改善し、複数年シミュレーションでも平均降水量の誤差が主要な大気モデルより平均40%小さくなった。

格子に収まらない雲の作用をAIで扱う

Googleが開発する大気モデルNeuralGCMは、大規模な大気の流れを流体力学の計算で扱い、雲や放射、降水などの小規模な物理過程をニューラルネットワークで扱う。今回の降水評価に用いたモデルの解像度は280 kmだ。

雲には100 m未満の規模のものもあり、全球モデルの格子では雲内部の細かな物理過程まで直接計算できない。従来のモデルがほかの大気変数から小規模な過程の影響を近似するのに対し、この大気モデルは、その影響をニューラルネットワークに学習させる。

降水の学習対象を再解析から衛星観測へ切り替える

初期版は、物理モデルと観測を組み合わせて過去の大気状態を再構成する「再解析」のデータで学習していた。更新版では、降水を扱う部分の学習に2001~2018年のNASAの衛星降水観測を直接使った。

この直接学習を支えたのが、微分可能な力学計算基盤だ。Googleによると、観測を学習に使うことで降水の日周期や極端な降水の再現が改善し、特に降水量上位0.1%で大きな改善が得られたという。

学習外の2020年データで15日先まで比較

Googleは、気象予測の評価基盤WeatherBench 2を使い、欧州中期予報センターの物理モデルと予測性能を比較した。開始時刻は学習に使っていない2020年の各日正午と午前0時で、低解像度での比較では、予測1~15日目の24時間・6時間積算降水量について、平均的な評価指標の大半でNeuralGCMが有意に上回った。

24時間積算降水量は、衛星降水観測データIMERGを基準に、予測性能を測る連続順位確率スコアで評価した。このスコアは低いほど良く、予測1~15日目のすべてで比較モデルより低かった。ただし、Googleは解像度280 kmでは実用的な気象予報に使うには粗すぎるとしており、この結果はその解像度での性能を示す。

複数年の平均降水量でも誤差が縮小

複数年のシミュレーションでも、NeuralGCMは平均降水量の再現精度を改善した。Googleの評価では、平均降水量の平均誤差は1日当たり0.5 mm未満だった。

比較対象は、最新の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告で用いられた主要な大気モデルだ。これらに対する誤差の削減幅は平均40%で、陸上ではさらに大きかった。