合成した神経細胞の形状を学習データに加えることで、脳の配線図を作るAIの誤りが減った。Googleの評価では、合成データを10%含めて学習した再構成モデルが、評価用のマウス軸索で誤り率を4.4%減らした。改善の中心は、無関係な神経突起を誤って結合する処理だった。
神経突起の断片を結ぶ処理に残る誤り
脳の配線図を作る処理は、薄切りした組織を撮影し、その画像を積み重ねて位置を合わせるところから始まる。画像内の領域を分けることで、2次元の像から神経細胞の3次元形状を再構成する。
Googleが開発する再構成モデルPATHFINDERは、神経突起、つまり神経細胞から伸びる部分の断片を識別し、それらを結合する。顕微鏡画像の不整合などによって、つながるべき断片が分離したり、無関係な断片が結合したりするため、専門家が手作業で修正している。
確認済みの軸索から新しい形状を生成
この結合処理の学習を補うため、Googleは神経細胞形状生成モデルMoGenを開発した。点群生成モデルPointInfinityを用い、ランダムに配置した3次元の点を、神経細胞らしい形状へ段階的に変換する。
生成モデルの学習には、人が確認済みのマウス大脳皮質の再構成データを使った。信号を送る突起である軸索1,795本の表面から点を取り出し、その点群を学習材料にした。
生成した形状の現実らしさは、実物と合成物の神経突起断片を混ぜた判別試験で確かめた。Googleによると、人の専門家は両者を区別できなかったという。
合成データ10%で誤結合が減少
生成した形状は、再構成モデルが学習する追加の例になる。Googleは数百万の合成形状をPATHFINDERの学習パイプラインに追加し、合成データを10%含む学習を行った。
Googleの評価では、このモデルは評価用に取り分けたマウス軸索を再構成する際、合成データを追加しない場合より誤り率が4.4%減少した。改善は主に、無関係な神経突起を結び付ける誤りの減少によるものだった。
生物種ごとの学習済みモデルを公開
形状生成モデルの学習対象は、今回の再構成評価に使ったマウスだけではない。Googleはキンカチョウとショウジョウバエの神経細胞でもMoGenを学習させ、生物種ごとのモデルを用意した。
MoGenは、これらの学習済みモデルとともにオープンソースで公開された。利用者は公開されたモデルを使って、神経細胞形状の生成を試すことができる。