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宇宙天気による変電所のリスクを30〜60分先まで予測するAI

この記事のポイント

  1. 実現したこと

    研究用の機械学習システムが、米国本土66,935カ所の変電所について30〜60分先の宇宙天気リスクを推定する。

  2. 実現の仕組み

    勾配ブースティングモデルが地磁気指標の予測と地点別の地質・位置情報を組み合わせ、磁場の時間変化率を推定する。

  3. 得られた結果

    Microsoftの評価で、磁場の時間変化率が10 nT/min以上のイベントを76.5%検出した。

  4. 従来との違い

    AE予測にDst予測を加えた構成では、最終的なリスク予測のsevereイベント検出率が1.2ポイント向上した。

太陽風による地磁気変化と、米国の変電所ごとの地質条件を組み合わせた宇宙天気リスク推定の概念図
AI生成画像

太陽風の観測から地磁気活動を予測し、変電所ごとの地質と位置を加えて30〜60分先のリスクを推定する研究用AIが開発された。Microsoftは、米国本土66,935カ所を対象とする予測処理とイベント検出性能を評価した。

太陽風から地磁気活動の二つの指標を予測する

宇宙天気の影響を電力網で捉えるには、磁気嵐の接近に加え、影響が現れる場所と時間を見積もる必要がある。極端な宇宙天気は送電網に電流を誘導し、設備損傷や運用リスクの増加を引き起こし得る。

Microsoftが開発した機械学習システムは、米国本土66,935カ所の変電所について30〜60分先のリスクを推定する。処理の出発点はL1ラグランジュ点で観測された太陽風で、その観測値から地磁気活動を表すAEとDstという二つの指標を予測する。

地質と位置を加えて変電所別の磁場変化へつなぐ

地磁気指標の予測は、変電所ごとに用意した地質の電気伝導度と位置情報とともに、勾配ブースティングモデルへ入力される。このモデルが推定するdB/dtは磁場の時間変化率で、送電網に生じる地磁気誘導電流のリスクに関係する量だ。

地質を入力するのは、電気抵抗の大きい岩盤がある地域では、電気を通しやすい地質の地域より強い誘導電流が生じ得るためだ。最終段階はこうした地点別の予測を米国本土全体のリスク評価へ集約し、各変電所の緯度と地質条件に応じた連続的な推定値として出力する。

磁場変化の強度別に検出率を評価する

Microsoftの評価では、AE予測にDst予測を加えることで、最終的なリスク予測システムのsevereイベント検出率が1.2ポイント向上した。地磁気指標を組み合わせた効果を、後段のイベント検出性能で確認した形だ。

イベントの区分には磁場の時間変化率を用いた。10 nT/min以上のmajorイベントの検出率は76.5%、20 nT/min以上のsevereイベントでは81.2%、50 nT/min以上のextremeイベントでは64.1%だった。ここでnT/minは1分あたりの磁場変化を表し、これらの数値は設備の損傷率を測ったものではない。

イベントの強度区分が上がるほど、誤警報率も高くなった。検出率と併せてこの傾向を捉えることで、強いイベントを見逃すリスクと、警報を出し過ぎるリスクの両方が評価対象になる。

66,935カ所の推定値を約333ミリ秒で生成

Microsoftが測定した推論では、66,935カ所すべての変電所の推定値を約333ミリ秒で生成した。公開された広域リスク地図には、代表的なmajorイベントのシナリオを用い、地点ごとに異なるモデル出力を示している。

この地図はシナリオ計算の実演であり、稼働中の電力網に対して警報を出した実績を示すものではない。Microsoftは、システムを電力網の運用に使う前に、電力事業者および運用データを用いた検証が必要としている。