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分子モーターが80度回る仕組みを分子シミュレーションで解明

この記事のポイント

  1. 実現したこと

    分子モーターF1-ATPaseの80度回転を、原子レベルの分子シミュレーションで解析した。

  2. 実現の仕組み

    固定部がゆがみ、続いて回転部へ押す力が働くことで80度の回転を駆動する。

  3. 得られた結果

    見いだされた回転機構は、クライオ電子顕微鏡の分子構造や単一分子分光の実験観測と整合した。

  4. 従来との違い

    粗視化モデルや外力に頼っていた従来の解析に対し、50万個超の原子を含む系で64本の分子動力学シミュレーションを並列実行した。

淡い青色の固定部が接触点でゆがみ、橙色の回転部を押して動かす様子を、周囲の分子とともに模式的に描いたF1-ATPaseの編集イラスト。
AI生成画像

生体内の分子モーターF1-ATPaseが80度回転する過程を、固定部のゆがみと、それに続く回転部への押す力で説明できることが分かった。原子レベルの分子シミュレーションで見いだされた機構は、分子構造や単一分子の実験観測とも整合する。

120度の回転のうち80度の段階を解析

分子モーターF1-ATPaseは、固定部に対して回転部が120度動く構造を持つ。この動きは80度と40度の二段階に分かれ、理化学研究所の杉田有治らは、最初の80度の段階をスーパーコンピューター富岳による分子シミュレーションで解析した。

50万個超の原子と64個の中間構造を計算

従来の解析は計算上の制約を受け、原子の集団をまとめて扱う粗視化モデルを使うか、回転を駆動する外力を加える必要があった。今回の対象系は50万個を超える原子から成り、回転過程にある64個の中間構造を作成した。富岳では64本の分子動力学シミュレーションを並列に実行し、複雑な分子系の動きを調べることができた。

固定部の変形から回転部への力が生じる

解析で見いだされた機構では、まず固定部にゆがみが生じる。それに続いて回転部へ押す力が働き、80度の回転を駆動する。固定部を変形しない土台として捉えるのではなく、そのゆがみから回転部への力につながる過程として、回転を説明する。

分子構造と単一分子の観測にも整合

この回転機構は、クライオ電子顕微鏡で得られた分子構造や、単一分子分光を含む実験観測と整合する。杉田有治らは、同じ解析手法を次の40度の回転段階にも適用する計画である。