磁性結晶をナノスケールのらせんに加工すると、電流が一方の向きに流れやすくなり、その向きを磁化やらせんの巻き方向によって反転できることが分かった。立体形状と電気的な働きを結び付けた実験では、強い電流パルスによる磁化反転も確認した。
単結晶を削って三次元のらせんを作る
理化学研究所の創発物性科学研究センターなどは、集束イオンビームで単結晶から三次元のナノスケール素子を削り出す加工法を開発した。ビームはサブミクロンの精度で材料を切削し、結晶の塊から必要な形を残していく。
実証には、コバルト、スズ、硫黄からなる磁性材料Co₃Sn₂S₂を用いた。この結晶をらせん状に加工し、立体形状を持つ素子の電気的な動作を調べた。
磁化と巻き方向が電流の方向差を反転させる
作製したらせん状素子では、電流が一方の向きに流れやすくなるダイオード効果を確認した。このように電流の向きによって流れやすさが異なる性質を、非相反な電気輸送と呼ぶ。
磁化を変えると、電流が流れやすい向きも反転した。らせんの巻き方向を変えた場合にも効果の向きが反転し、磁気的な状態と形状の両方が電気的な方向差に関わることが確かめられた。
曲がった壁面での電子散乱に原因を絞る
この方向差の原因を調べるため、実験では大きさと温度を変えたらせんを比較した。理化学研究所などは、その結果から、曲がったキラルな壁面で電子が非対称に散乱することにダイオード効果の起源を結び付けた。
キラルな形状とは、右巻きと左巻きのように、鏡像同士を重ね合わせられない形状を指す。このらせんでは、電子が散乱する壁面の曲がり方と巻き方向が、電流の流れやすさの非対称性を生む要素となる。
電流パルスでらせんの磁化を反転させる
磁化が電流の流れやすい向きを左右する一方、電流によって磁化を変える動作も確認された。強い電流パルスを加えると、らせん状素子の磁化が反転した。