火星探査車の試作機が、実機用の走行制御ソフトウェアを使って砂漠で60m超を自律走行した。遠隔の管制センターでは、画像や地下の観測データから探索地点を選び、翌日の指令を組み立てる運用も試した。
実機用ソフトウェアで遠隔指令から自律走行へ
欧州宇宙機関(ESA)によると、火星探査車の試作機Charlieは、スペイン南東部のタベルナス砂漠で8日間に220mを走行した。指令を作成する科学担当者は約1200km離れており、遠隔で探索を進める運用を試した。
Airbusが製作した試作機には、火星探査車Rosalind Franklinが危険を避けて目標へ到達するために使うものと同じ誘導・航法・制御ソフトウェアを搭載した。ESAの探査車運用責任者Luc Joudrierによると、試験6日目には操縦者の操作なしで60m超を走行し、航法誤差は1%未満だった。
画像・分光・地下レーダーから探索地点を選ぶ
走行先を選ぶ観測には、実機の科学機器に対応する試作機を使った。遠方・広角撮影用のカメラPanCamと近接撮影用のカメラCLUPIに加え、分光計Enfys、地中探査レーダーWISDOMからデータを得た。
イタリア・トリノの探査車運用管制センター(ROCC)では、科学担当者が画像、地下のレーダーデータ、分光分析を使って探索地点を選んだ。選定の対象は、生命の証拠を探すうえで有望な場所だった。
観測データを翌日の指令へつなぐ
試作機が現地から位置情報、測定値、画像を送る間、管制センターの計画・科学担当者は翌日の運用を準備した。運用計画の合意後に指令を送り、目標、経路、結果、科学的な議論を追跡する手順で進めた。
現地の走行と管制側の計画作成は、二つの拠点で分担した。Airbus UKがスペイン側の試験を取りまとめ、英国の大学The Open Universityがイタリアの管制センター側の活動を管理した。
標高地図で斜面を確認し、中断時には計画を変更
遠隔での経路判断では、試作機から届いたデータだけでは斜面の傾きを判断しにくい場面があった。担当者はまず安全側に走行し、その後デジタル標高地図を使って、実際には緩やかな傾斜であることを確認した。
別の日には、雨によって砂漠での試験が中断した。この中断に対応して、担当者は計画と優先順位を組み直した。