シリコン基板そのものを吸収構造に組み込み、追加の絶縁体層なしでテラヘルツ波を高効率に吸収する方式が実証された。約1マイクロメートルの段差とアルミ薄膜を使った試料は、1.8 THzで約95%の吸収を示した。
熱型検出器への組み込みを妨げる追加層
東京農工大学、情報通信研究機構(NICT)、英国サウサンプトン大学は、シリコン基板と一体になった新しいテラヘルツ波吸収体を開発した。テラヘルツ波を熱として捉える検出器では、入射した電磁波を効率よく熱に変換することが検出感度を高めるうえで重要になる。
高い吸収率を得る従来方式の一つが、金属、絶縁体、金属を重ねる吸収体だ。この方式は金属層の間に絶縁体のスペーサー層を追加する必要があり、全体の厚みが数マイクロメートルから数十マイクロメートルに達する。
約1マイクロメートルの段差で基板を吸収構造にする
新しい吸収体は、シリコン基板に約1マイクロメートルの段差を設け、上下の表面にそれぞれ厚さ150ナノメートルのアルミ薄膜を形成する。基板に設けた微細構造を利用するこの人工的な表面が、基板一体型メタサーフェス吸収体(SIM)である。
SIMでは、シリコン基板そのものが電磁波の吸収を支える誘電体領域として働く。基板を吸収構造の一部にしたことで、追加のスペーサー層なしに、従来の金属−絶縁体−金属型と同様の共振吸収機能を実現した。
金属パッチと加工深さで吸収周波数を調整
この共振吸収を電磁界シミュレーションで評価すると、最大98%以上のテラヘルツ波吸収が得られた。この値は計算上の吸収率であり、作製試料の測定値とは区別される。
吸収する周波数は、金属パッチの長さ、パッチ間隔、エッチング深さを変えることで調整できることも確認された。吸収構造の寸法と加工深さが、狙う周波数を選ぶための設計要素になる。
1.8 THzで約95%の吸収を測定
共同研究による作製試料の評価では、テラヘルツ時間領域分光法を用い、設計した周波数の1.8 THzで約95%の吸収を確認した。吸収ピーク付近のピーク周波数とピーク吸収率はシミュレーションと一致し、基板を利用した構造が実際に高効率な吸収体として機能した。
検出器への組み込みについて、東京農工大学、NICT、サウサンプトン大学の共同研究グループは、MEMSボロメータなどでの検証を予定している。吸収体を組み込んだ段階で、検出感度、応答速度、機械的安定性への効果を調べる。