抗生物質の生合成酵素が、供与体の分子からメチル基ではなく別の側鎖を移す仕組みが分かった。酵素複合体のX線構造では、抗生物質の前駆体の反応部位が、移される側鎖に近い位置へ固定されていた。
同じ供与体からメチル基ではなく側鎖を移す
天然の抗生物質ノカルジシンAは、土壌に生息する細菌が生合成する。その過程では、酵素がS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)から、前駆体のノカルジシンGへ3-アミノ-3-カルボキシプロピル基(3-ACP)という側鎖を移す。
SAMはメチル基の供与体としてよく知られている。理化学研究所の阿波覚征らが取り組んだのは、この酵素がメチル基ではなく3-ACPを移す理由の解明だ。
X線構造で転移直前の配置を捉える
酵素自体の構造は計算による解析で得られても、3-ACPが移される仕組みの説明にはX線構造解析が必要だった。阿波覚征らは、3-ACPが前駆体へ移る直前の配置を捉えた酵素複合体のX線構造を初めて取得した。
前駆体の固定位置が3-ACPの転移を有利にする
複合体の中では、ノカルジシンGがアミノ酸残基と水分子のネットワークを介して酵素に固定されていた。この固定によって、前駆体の反応部位はSAMのメチル基より3-ACPに近い位置に置かれる。反応部位と供与される基の位置関係が、3-ACPの転移を有利にする。
市販の抗生物質でも修飾生成物を検出
3-ACPによる修飾は、ノカルジシンG以外を基質にした実験でも確認された。阿波覚征らは、市販の抗生物質アモキシシリンとセファドロキシルを使い、3-ACPで修飾された生成物を検出したとしている。