ミカン園で化学農薬を減らすと、土壌微生物の多様性が高まる一方、果実の病害は増える関係が確認された。12県の実際の栽培データを使い、気候や樹齢などの条件差を統計的に調整した解析結果だ。
12県のミカン園で栽培方法と試料を対応させる
理化学研究所の持続可能資源科学研究センターで市橋泰則が率いる研究者は、日本の12県のミカン園から果実と土壌の試料を集めた。対象は農家が農薬や肥料を選ぶ実際の生産現場で、最も一般的だったのは化学農薬と化学肥料・有機肥料を組み合わせる栽培方法だった。
栽培方法が異なる園では、気候や樹齢なども異なっていた。この条件差があるため、果実や土壌の状態をそのまま比べると、栽培方法による違いと環境による違いが混ざる。
逆確率重み付けで園ごとの条件差を調整
比較に使った統計手法は、条件差を重み付けで調整する逆確率重み付けだ。品種区分、樹齢、年間気温、降水量、日照時間、土壌の種類などを調整対象とした。
この調整を経て、農薬・肥料の種類が土壌の性質、微生物群集、果実の品質に及ぼす影響を評価した。農家自身が資材を選んでいる観測データを使いながら、栽培方法以外の条件の偏りを抑えて比較する仕組みである。
果実の病害と土壌の微生物で異なる変化
条件差を調整した解析では、化学農薬の削減に伴って、葉の病原体による果実の病害が増加した。一方、土壌では微生物の多様性が高まり、土壌の病原体は減少した。
減農薬に伴う変化は、果実と土壌で同じ方向にはそろわなかった。土壌微生物の多様化や病原体の減少だけで栽培方法を評価すると、果実側で確認された病害の増加を捉えきれない。
土壌炭素の増加は有機肥料の使用と一致せず
土壌の炭素含有量についても、有機肥料を使うこと自体に増加は結び付かなかった。増加が認められたのは、化学資材の投入を減らした場合だった。
この比較では、有機肥料の使用と化学資材の削減を分けて評価している。炭素含有量の増加を有機肥料の効果と一括して扱わず、投入削減に伴う変化として捉える結果となった。