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ミカン園の減農薬で土壌微生物が多様化、果実の病害も増加

この記事のポイント

  1. 実現したこと

    12県のミカン園の果実・土壌データから、条件差を調整して農薬・肥料の影響を評価した。

  2. 実現の仕組み

    逆確率重み付けで、栽培方法ごとに異なる気候、樹齢、品種、土壌などの条件を調整した。

  3. 得られた結果

    調整後の解析で、化学農薬の削減に伴う葉の病原体による果実病害の増加を確認した。

  4. 従来との違い

    化学農薬を減らした園では、土壌微生物の多様性が高まり、土壌の病原体は減少した。

ミカン園の木の根元を土壌断面とともに描き、病斑のある果実と葉の下に、多様な土壌微生物を対比して示した編集イラスト。
AI生成画像

ミカン園で化学農薬を減らすと、土壌微生物の多様性が高まる一方、果実の病害は増える関係が確認された。12県の実際の栽培データを使い、気候や樹齢などの条件差を統計的に調整した解析結果だ。

12県のミカン園で栽培方法と試料を対応させる

理化学研究所の持続可能資源科学研究センターで市橋泰則が率いる研究者は、日本の12県のミカン園から果実と土壌の試料を集めた。対象は農家が農薬や肥料を選ぶ実際の生産現場で、最も一般的だったのは化学農薬と化学肥料・有機肥料を組み合わせる栽培方法だった。

栽培方法が異なる園では、気候や樹齢なども異なっていた。この条件差があるため、果実や土壌の状態をそのまま比べると、栽培方法による違いと環境による違いが混ざる。

逆確率重み付けで園ごとの条件差を調整

比較に使った統計手法は、条件差を重み付けで調整する逆確率重み付けだ。品種区分、樹齢、年間気温、降水量、日照時間、土壌の種類などを調整対象とした。

この調整を経て、農薬・肥料の種類が土壌の性質、微生物群集、果実の品質に及ぼす影響を評価した。農家自身が資材を選んでいる観測データを使いながら、栽培方法以外の条件の偏りを抑えて比較する仕組みである。

果実の病害と土壌の微生物で異なる変化

条件差を調整した解析では、化学農薬の削減に伴って、葉の病原体による果実の病害が増加した。一方、土壌では微生物の多様性が高まり、土壌の病原体は減少した。

減農薬に伴う変化は、果実と土壌で同じ方向にはそろわなかった。土壌微生物の多様化や病原体の減少だけで栽培方法を評価すると、果実側で確認された病害の増加を捉えきれない。

土壌炭素の増加は有機肥料の使用と一致せず

土壌の炭素含有量についても、有機肥料を使うこと自体に増加は結び付かなかった。増加が認められたのは、化学資材の投入を減らした場合だった。

この比較では、有機肥料の使用と化学資材の削減を分けて評価している。炭素含有量の増加を有機肥料の効果と一括して扱わず、投入削減に伴う変化として捉える結果となった。