褐色矮星37個の大気から、水やメタンなどの分子の痕跡が見つかった。宇宙望遠鏡SPHERExのスペクトルは、雲が薄くなってメタンに富む大気へ移行する段階を捉え、同じ温度でも天体ごとに違いがあることを示している。
高温から低温まで37個の大気を比較
NASAの赤外線宇宙望遠鏡SPHERExを使い、カリフォルニア工科大学の科学・データセンターIPACに所属するZafar Rustamkulovらは、近傍の褐色矮星37個を解析した。対象の温度は約2200℃から約マイナス20℃にわたり、温度の異なる大気を比較する観測となった。
褐色矮星は、恒星と同じようにガス雲が収縮して生まれる。ただし、中心部で水素核融合を持続させるだけの質量がなく、恒星とは異なる性質を持つ。
102種類の色から分子の吸収を読み取る
SPHERExは、赤色の可視光から赤外線にかけて102種類の色で天体の明るさを測る。その測定を波長ごとの明るさの分布であるスペクトルにすると、大気中の分子が外へ出る光に残す固有の吸収パターンを調べることができる。
この観測では、地球大気の水が吸収してしまう波長も対象になる。その波長は地上の望遠鏡では観測が困難だが、軌道上の望遠鏡は地球大気による吸収を避けて捉えることができる。
水やメタンの痕跡と雲の移行段階
解析したスペクトルからは、水、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンの痕跡が見つかった。これらの分子による吸収を温度の異なる天体間で比較すると、大気の化学的な違いを追うことができる。
観測対象の一部は、雲が薄くなり、メタンに富む大気へ移行する段階にある。一方、同じ温度の褐色矮星でもスペクトルは異なり、温度をそろえても天体ごとの違いが残った。
雲の変化でモデルと観測に隔たり
Rustamkulovは、最新のモデルが大気の化学的変化の大まかな傾向を捉えていると説明している。ただし、雲が変化する移行段階では、モデルは観測データの再現に苦戦しているという。
宇宙望遠鏡で詳しく調べられた褐色矮星は、これまで数十個にとどまっていた。SPHERExは赤色の可視光から赤外線にかけた波長域で、数千個を初めて撮像している。