液体ヘリウム上に浮かぶ電子の励起を、量子静電容量の変化として検出した。約1000万個の電子を使った測定で、電子スピンの間接読み出しに向けた検出方法を試した。単一電子での検出は、この結果に基づく見通しの段階にある。
スピンの直接読み出しを阻む小さな磁気モーメント
液体ヘリウム上に浮かぶ電子は、周囲の粒子のスピンによる干渉が少ない量子ビット候補だ。一方、その電子に情報を保存するには、スピンの状態を読み出す方法も必要になる。
電子の磁気モーメントは小さく、スピンを直接読み出すことが困難である。そこで間接読み出しに向けて検討されているのが、最低エネルギー状態から、より高いエネルギーのリュードベリ状態への遷移を検出する方法だ。
約1000万個の電子をコンデンサーとして使う
理化学研究所の量子計算研究部門に所属するAsher Jennings、Erika Kawakamiらは、液体ヘリウム上の約1000万個の電子を使い、コンデンサーとして働く実験系を構成した。この系にマイクロ波を用い、その周波数を変化させることで電子をリュードベリ状態へ励起した。
励起に伴う量子静電容量の変化を捉える
電子がリュードベリ状態へ移ると、実験系の量子静電容量に変化が生じた。測定はこの変化を捉え、電子のエネルギー状態の遷移を静電容量から検出できることを示した。今回検出したのは多数の電子の励起に伴う信号であり、単一電子のスピン情報を読み出した結果ではない。
小型化した系で単一電子の測定へ
理化学研究所は、実験系を1万分の1に小型化すれば、単一電子の遷移に伴う静電容量の変化も検出できる見通しを示している。これは多数の電子で得た静電容量の測定結果に基づく見通しで、単一電子での実測とは区別される。Jennings、Kawakamiらは、単一電子の系で同じ測定を行うための研究を進めている。