有限温度の熱平衡状態では、真に3者にまたがる量子相関は遠距離まで及ばない。相関の強さを表す条件付き相互情報量が距離とともに指数関数的に減衰するという数学的な証明が、量子物質の性質を支える相関の広がりに制約を与えた。
2粒子の相関だけでは説明できない量子相
量子物質が示す多くの量子相は、2粒子間の相関を考えることで説明できる。一方、2粒子を超える粒子間のつながりを考慮しなければ説明できない量子相も見つかっており、その相関がどこまで広がるかが問題になっていた。
従来の3者間相関の解析は、特定のモデルや条件に限られていた。高温での解析や強い簡略化の仮定に基づく結果では、より広い温度範囲で同じ制約が成立するかは分からなかった。
中間領域の情報を条件に相関を測る
理化学研究所の量子コンピュータ研究センターに所属する研究者Tomotaka Kuwaharaは、相関の強さを評価するために条件付き相互情報量を用いた。これは、中間領域の情報を条件にして、離れた両側の領域の間にどれだけ相関が残るかを捉える指標である。
距離による指数減衰を任意の有限温度で証明
条件付き相互情報量は、熱平衡状態では領域間の距離が大きくなるにつれて指数関数的に減衰する。この距離依存性が数学的に証明され、真に3者にまたがる量子相関が遠距離まで及ばないことが示された。結論は高温だけに限られず、任意の有限温度で成立する。
両側の領域のほぼ独立性が物質の性質を制約
中間領域の情報をすべて知ると、離れた両側の領域はほぼ独立になる。熱平衡状態の量子系で成立するこの関係は、Hammersley–Clifford則の量子版に当たる。3者間の量子相関の広がりが制限されることで、有限温度の量子物質が示す特異な性質にも基本的な制約が加わる。