Semiconductor

マイコン内蔵の磁気メモリー、200MHz超で読み出し

この記事のポイント

  1. 実現したこと

    マイコン内蔵の磁気メモリーMRAMが、出力を受け取る回路のセットアップ時間を含めて200MHz超のランダム読み出しに対応した。

  2. 実現の仕組み

    チップごとのセル電流分布に合わせて読み出しの基準電流を設定し、電流を比較する回路のオフセットも低減した。

  3. 得られた結果

    ルネサスの試作チップ評価では、最大接合温度125℃で10.4MB/sの書き込みスループットを確認した。

  4. 従来との違い

    二段階の書き込み方式で最初に全ビットへ加える電圧を引き上げ、ルネサスは従来方式に対するスループットの1.8倍への改善を確認した。

評価基板上のマイコン試作チップを拡大し、MRAMセル配列の異なる電流経路が中央の判定回路へつながる様子を描いた技術イラスト。
AI生成画像

マイコン内蔵の磁気メモリーMRAMで、読み出し時の電流判定と配線制御を改良し、200MHz超のランダム読み出しを実現した。ルネサス エレクトロニクスの試作チップ評価では、最大接合温度125℃でこの読み出し性能と10.4MB/sの書き込みを確認した。

セル電流の分布に合わせて0と1を判定する

マイコン内蔵の磁気メモリーであるSTT-MRAMは、0と1を読み分けるセル電流の差がフラッシュメモリーより小さい。読み出しを高速化するには、その差の中央へ基準電流を正確に置き、セル電流との大小関係を判定する必要がある。

半導体メーカーのルネサス エレクトロニクスは、試験工程で測定したチップごとのセル電流分布に合わせて基準電流を設定する回路を開発した。比較を担うセンスアンプのオフセットも低減し、電流の判定を高速化した。この技術を組み込んだマイコンの試作チップは22nmプロセスで製作され、10.8MbitのMRAMセルアレイを内蔵する。

ビット線の寄生容量を減らして4.2nsでアクセス

電流判定に加え、ビット線の電圧を制御する回路も読み出し速度を左右する。読み出し中の電圧上昇を抑える従来の回路は寄生容量が大きく、動作を遅くしていたため、新しい回路にはトランジスターを直列に接続するカスコード接続を導入した。これにより寄生容量を減らし、読み出しを高速化した。

ルネサスによると、電流判定とビット線制御の改良によってランダムアクセス時間は4.2nsとなった。MRAMの出力を受け取るインターフェース回路のセットアップ時間を考慮しても、200MHzを超える周波数でランダム読み出しが可能になったという。試作チップの評価では、最大接合温度125℃でこの動作を確認した。

二段階書き込みの最初の電圧を引き上げる

書き込み側には、ルネサスが2021年に開発した二段階方式を改良して用いた。従来方式は、外部電源から降圧した低い電圧を書き込み単位の全ビットへ同時に加え、書き込めなかったビットだけにチャージポンプで生成した高い電圧を加えていた。

新しい方式は、試験工程や機器メーカーで電源条件が安定していることを利用し、外部電圧の下限条件を緩和した。その条件に合わせ、最初に全ビットへ加える降圧後の電圧を引き上げている。ルネサスは、この変更によって従来方式に対する書き込みスループットを1.8倍に改善したとしている。試作チップの評価では、最大接合温度125℃で10.4MB/sを確認した。

一度だけ書き込む領域もMRAMセルで実装

試作チップは通常のMRAMに加え、一度だけ書き込めるメモリーであるOTPを0.3Mbit搭載する。この領域はMRAMセルの破壊を利用してデータの改ざんを防ぐ構成で、セキュリティー情報を保存することができる。

OTPへの書き込みには、通常のMRAMよりも高い電圧が必要になる。このため電源電圧が不安定になりやすい実使用環境では書き込みが難しかったが、ルネサスはセルアレイ内の寄生抵抗を抑え、実使用環境での書き込みも可能にしたとしている。