腫瘍のない肝組織の遺伝子発現から算出したスコアが、肝細胞がん患者の再発リスクと予後に関連した。マウスで見つけたMYCN関連の発現環境を機械学習で数値化し、ヒトのデータで評価した結果、腫瘍組織より非腫瘍組織のスコアに強い関連が認められた。
MYCNと活性化AKTの組み合わせで肝腫瘍が生じる
肝発がんに関わる遺伝子MYCNの働きを調べるため、理化学研究所の生命医科学研究センターでXian-Yang Qinらは、マウスの肝臓でMYCNを過剰発現させた。導入には、尾静脈への注入と、遺伝子をゲノムへ組み込むトランスポゾン系を用いた。
MYCNに加えて恒常的に活性化したAKTを過剰発現させると、50日以内にマウスの72%で肝腫瘍が生じた。MYCNまたはAKTのいずれかだけを過剰発現させた条件では、腫瘍は生じなかった。
腫瘍のない領域から167遺伝子の発現環境を捉える
発がんに関わる組織環境の解析には、遺伝子の発現とその位置を同時に捉える空間トランスクリプトミクスを使った。代謝機能障害に関連する肝がんのマウスモデルを対象に、腫瘍が形成される過程で発現がいつ、どこで変化するかを調べた。
解析では、MYCNの発現が増えている場所に着目した。その非腫瘍領域で発現に差のある167遺伝子のまとまりを見つけ、この発現環境を「MYCN niche」と名付けた。
発現パターンをスコアに変換し、93%の精度で判別
この空間的な発現データを基に、MYCN nicheに対応するパターンを判別する機械学習モデルを構築した。モデルは遺伝子発現パターンの特徴を入力として受け取り、対応の程度をMYCN nicheスコアとして出力する。
このモデルによる判別精度は93%だった。この数値はMYCN nicheへの対応を判別する精度であり、患者の再発を93%の精度で予測したという意味ではない。
再発・予後との関連は非腫瘍組織のスコアで強い
MYCN nicheスコアをヒト肝細胞がんのデータセットにも適用した。スコアが高い患者ほど、腫瘍の再発リスクが高く、臨床転帰も不良だった。
この関連は、スコアの算出に使う組織によって異なった。腫瘍組織から算出する場合より、非腫瘍組織から算出する場合の方が、再発・臨床転帰との関連は強かった。